50円おつりが多かったときのこと
自分のことを思い出した。騙し取ったのとはちょっと違うけど。
低学年時分のことだったとは記憶している
夕暮れ時だった
母はいつものように食パンのおつかいを頼んだ
夏の日の暮れるのは早い
もうすぐ日が落ちて暗くなってしまう
近所のパン屋へと足早に歩いた
帰り道手の中のおつりが50円多いことに気づいた
ラッキー得した
足取りも軽く家に帰った
そして得意気に母にそのことを話した
怒られた
返してきなさいと一言怒られた
淡々としてしかし力強い声だった
その50円を返したかどうかは忘れてしまった
ただ凛としてその目は僕を見据えていた
仕事の休憩中、ふとクリックをためらいながらも見た記事に、そんな少年時代の思い出をフラッシュバックさせていた。
その日は定時を10分すぎて退社した
日はとっぷりと暮れている
彼女からいつものように買出しを頼まれる
電車で最寄り駅に着いたのが8時前
もうすぐ1日が終わる
駅中のニク屋へと人並みを避け歩く
レジ前で手に取った商品が妙に安いことに気づく
値札ラベルが違っている
ゆっくりと立ち止まる
そしてあの日の母のことを思い出した
僕は踵を返す
店員に間違いを伝える
値札を張り替えてもらいまたレジへ
お勘定を済ませて店を後にする
ただなんとなく夜の空を僕は見上げていた
こんなこともあるもんなんだな。不思議な一日だった。
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